Q1:モノづくりの本質とは?
A1:お客様満足に適応した生産システム構築で利益を生む事です。
多頻度及び継続的に発表される新製品と消えていく旧製品、消費者ニーズの多様化、マーケットの国際化等と生産工場がおかれている環境は刻々と変化している。結果として、商品ライフサイクルの短命化、客先要求リードタイム短縮化、価格破壊、需要変動大(品種数増加/数量増減/急な要求と注文のキャンセル) 等とモノづくり側にとっては苦しい状況になってきて、更には中国企業の追い上げもあり、マーケット変化に上手く対応して進化するしか国内では勝ち残れない状況になってきた。マーケット環境変化に対応して勝抜いていくには『コストダウン』と共に、マーケット変化に対応できる『フレキ性のある生産システム』を構築していく事が必須です。『フレキ性のある生産システム』とは『お客様満足に適応した生産システム』へと、進化できるという事です。これらの思想は全ての生産ラインに適応されます。下図は、生産ラインのあるべき姿と、それを構築して進化していく為に必要な改善改革手法を書き込んだものです。今までの経験と実績から考えた「現時点でのベストな姿と改善改革手法」ですが、将来も大きく変化する事はない・・・と確信しています。
Q2:具体的には何をすれば顧客満足なの?
A2:顧客満足方程式に示す品質とコストの達成。
事業を存続発展させるには、顧客満足(CS:Customer Satisfaction )抜きでは不可能である事を誰もが認識して、報道とか通常の話題としても時々出てきます。しかし、どうする事が顧客満足なのかを具体的に説明できる方は少ないようです。顧客満足とは『お客様にタイミングよく良い品物を安くお届けする事』です。これに適応する生産システムを構築して利益を出していく事が“モノづくりの本質”であり、製造会社の永遠の課題です。品質とは製品の品質だけではなく、コストも投入コストだけではありません。一般的に言うCS方程式では、分母のコストは投入コストと提供コストの足し算ですが、分子の製品品質と提供品質は掛け算になります。つまり、分子のどちらかがゼロであれば“CS=ゼロ”となり企業存続の重大な危機になります。それだけ品質は重要だという事を表現しています。下図は、CS方程式にて示される『CS(顧客満足)達成に向けて必要な推進事項』を、製品品質、提供品質、投入コスト、提供コストの4つに分類して整理したものです。
Q3:生産工場に期待されている事は?
A3:期待ではなくて“2大テーマの達成義務” がある。
生産工場の運営に携わり、会社から給与を受ける権利のある方達には2大テーマを達成する義務があります。
【テーマ1】:生産性向上で製造コスト削減!
【テーマ2】:QCDS達成で顧客満足を実現し継続的受注獲得
一般的には“モノづくりレベル”と“CS達成度”には左グラフのような相関関係があります。モノづくり改善改革をやらないでCSだけを達成しようとしても、どこかにムリとムラが出てきて多くのムダが発生します。従って先ずは、モノづくりレベルアップで、工場内3Mの3ムを削減し、効率改善⇒生産性向上⇒製造コスト削減に向けた全体活動を推進して成果を出せば、必然的に無理なく後戻りの無い顧客満足を達成できる。
Q4:ライン改善の切り口と手法は?
A4:改善計画策定はIE(3M)分析、全員参加の活動はPM。
◆PMも含む3M分析→3ム削減→継続的な全社改善活動→生産変革→経営効率化生産ラインには、3M(人、設備、材料)と言われる 会社が時間と金をかけて準備した3大資源(別名:生産の3要素)があります。この組合わせ(有効活用)が、利益を出して勝ち残る為に非常に重要であり、3M分析は継続して行われるべきです。3M分析で経営効率化への最適解が見える。〈3M分析≒IE分析〉になりますが、設備可動率100%を目指す全員参加のPM活動もしっかり推進しなければ、品質も含めた安定生産を維持出来ない為に、生産変革、つまり経営効率化には繋がりません。
◆(有効な手法:IE/PM/6σ)+(会社全体の継続的支援)=(ゴールが見えてくる)
IEとPMは、現場重視で改善を推進する手法ですが、現場を見ただけでは分からない事でも入手したデーターから様々な統計的判断が出来る“6σ”も併せて活動に取り込めば、ゴールの方向を見失わずに的確な活動の方向付けが出来ます。現場改善によって成果を得るには、IE/PM/6σ などの手法を駆使できる人材の確保と、会社を挙げた継続的な支援 の二つが必要になります。
@キーパースンへの動機付けと改善スキルアップ教育
A改善活動に対する管理監督者の理解(人材と活動時間の割り当て等)
下図は、生産ラインの3Mに入り込んでいる3ムを、見つけ出して取り除いていく為の考え方と手法を整理したものです。
Q5:効率と生産性の関係は?
A5:生産ラインと作業者の効率改善で生産性は向上する。
効率の考え方は生産ライン、直接作業者、間接作業者とも同じです。
又、生産性向上は下記の通り、生産ラインと作業者の効率改善で達成できます。
◆【一般的に使用される生産性】
=【生産数、生産高等】÷【人数、作業時間、設備台数、作業面積等】
《備考》生産性の用途により色々な計算式で算出されます。
分子は製造ラインの設備総合効率(良品取得率)改善で生産数を上げる。分母は@IE分析 A設備投資 B歩留向上 Cシステム改善で人員や作業時間を削減します。先ず投資なしで生産能力向上と人員削減を徹底的に行ってから、残った部分に設備投資効果を確認しながら投資して人員削減を進めるのが基本です。ロスがある状態で設備投資するのを「ロスの上塗り」と言って、全く無駄な投資です。
◆【日産数】
=【ボトルネック工程の理論能力】*【生産ラインの生産効率】
《備考》上記の通り、日産数向上には
@ボトルネック工程の理論能力を上げる
A生産効率を上げる・・・この二通りしか方法が無いので両方を検討する。
まずは、投資なしで日産数向上を検討すべきです。
これが出来れば、固定費削減で会社の損益を劇的に改善できます。
下図は、各効率の構成、効率改善手段、各効率改善による生産性向上、のカラクリを整理したもので、「生産性向上に向けてのやるべき事」を明快に説明しています。
Q6:現場作業の工夫でも生産性を上げられますか?
A6:同じシステムでも現場の作業管理次第で生産性が変わる。
上図のように作業者が現場で作業をする場合には、@考えナイA探さナイB選ばナイ・・・の3ナイが、生産性向上/品質安定化/安全作業の為に重要です。更には、@常に正常な形で作業に取り掛かれる事A異常発生時には適切な処置が自律的に出来る事が必要。その為には下記に示す8つの作業管理が重要となる。
(備考)「付加価値の無い動き」とは、その作業者の動きでは製品が完成に向けて変化
しない事を言い、全てを「ロス」と考えて削減を目指した活動が必要です。
Q7:適材適所配置には作業速度限界を見極めるべきなの?
A7:作業訓練後に各作業者の速度能力で適材適所配置を行う。
作業速度はゴルフなどのスポーツと同じように、生まれつきの素質とかセンスでほぼ決まってしまい、経験や訓練を沢山積んでも本人の素質以上に速くなる事はない。冷たいようでも各作業者固有の作業速度限界を早く掴んで、適材適所の人員配置による工程間ラインバランス化達成で生産効率を上げる事で、会社に貢献できる。
Q8:ストックレス生産とライン分断ではどちらが良いの?
A8:理想はストックレス生産。現実的にはライン分断も有り得る。
【1.モノづくり基本の中で一般的に言われている流し方の基本】
一般に言われている生産ラインの流し方基本(常識)は下記の通りです。リードタイムの短縮と共に、情報・物の仕掛(ストック)を削減して、市場のニーズに即応出来るフレキシブルな生産管理システムを構築する為には、ストックレス生産を目指すべきである。
【2.しかし、何故 理想のストックレス生産ラインを構築出来ない場合が多いのか?】
ストックレス生産ライン構築で仕掛を減らす為には何をすれば良いのか・・? その前に何故、仕掛が必要となったのか?を整理すると下記の7項目などが考えられます。
- 小ロット生産化を妨げる長時間段取り、及び段取替作業手順と時間がバラバラ
- 作業配分や多工程持ちの為のレイアウト不備⇒やりたくても物理的に不可能
- 機動的人員配置の為の多能工化遅れ⇒単能工が多く不可能/多能工教育不足
- 品質不安定、自工程保証体制の不備(不良品のリジェクトと再投入など)
- 設備設計不具合とプアーな設備保全による多頻度機械故障停止と長時間停止
- プアーな製造技術で加工そのものの不具合が多く、流れが安定しない
- ネック工程の生産能力不足及び弾力性不足(工程間能力のアンバランス)
上記の理由でその存在に疑問も感じなくなった職場で、その状態が異常であり改善の必要がある事を説明説得して、改善活動まで持っていくには大きなエネルギーが必要。
【3.ではどうするのか?】
まず最初に、出来るだけ設備投資を少なくしたストックレス生産ラインを考えてみる。どうしても投資金額大、製造技術限界、設備技術限界、マーケット状況などから判断して、現状ではストックレス生産ライン構築が不可能な(又は得策でない)場合にはライン分断で部品ストアーを構築し、受注組立生産ラインを構築するのも有効な一手となります。上述の通り、ストックレス生産ライン・・・つまり一気通関が理想の生産ラインなので最初に充分に検討すべきだが、前述の「ストックレス生産が出来ない7つの理由」をどうしてもクリアーできない場合には、ライン分断が現実的な場合もあるのです。現状ではラインを分断する半成品在庫方式(WIP方式)が最適な場合があるのです。
【4.ライン分断実施例】
この生産ラインでは、色々な改善を進めてきたが、どうしても部品工程の生産数が安定せず組立工程に満杯で投入できない場合が多く慢性化した大きなロスが発生していた。新規設備投資が出来ない状態だったので、対策として部品工程と組立工程間を分断して部品ストアー(WIP)を設けて、ストックする生産品種別の数量を決めてコントロールした。又、「人と設備の手待ち」がないように交替勤務体制を変えて大幅な人員削減を行った。このシステムでの生産開始直後は人の不慣れなどで混乱したが、3ヵ月後には以前の日産数を超えるようになり当初目標を達成できた。これで下記の多大な成果を出せた。
@人員削減して日産数増加=生産性向上 A製品在庫と工程内仕掛削減